新宿西口から都庁に続くトンネルを抜けると一気に視界が開け、ケヤキ並木の街路に面した豊かな緑の空間に目を奪われます。京王プラザホテルの雑木林庭園として知られるこの空間は、ランドスケープデザインの新時代を切り拓き、自らを「外空間作家」と称した深谷光軌氏が1971年のホテル開業時に手がけた作品。武蔵野の原風景を高層ビルが建ち並ぶ都市景観に見事に調和させた傑作として、今なお語り継がれ、愛され、訪れた人々を癒しています。
街路から自然にホテルへと誘う石張りの斜面、どの高さにも緑が目に触れる雑木の植栽、雑木林を縫って歩く楽しみをもたらしてくれる自然石を埋めた遊歩道…、と随所に深谷氏ならではの印象的な演出が施されています。なかでも階段の袖壁から突き出した石の配置は、氏の提唱する「意図された逞しい自然」の象徴。風がわたる木立や植栽の穏やかな自然と組み合わせることで、現代人の心にも訴えかける迫力のある外部空間づくりを目指したのです。
変化や動きを独自のデザインに昇華させ、生き生きとしたスケールの大きな自然空間を現出させたこの雑木林庭園は、深谷氏の美意識の結晶。ホテルとともに樹木も石も年輪を刻んだ今、さらに緑濃く、奥深い味わいを醸しています。