人事部人材戦略 サービスクオリティマネジャー 森 孝彦

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「大変な経験も喜びに変えてくれる。それが宴会の仕事です

人事部人材戦略 サービスクオリティマネジャー
 森 孝彦 

人々が集いあう喜びが久しぶりに戻ってきた、2023年の年末年始。
ホテルでもご宴会が数多く予定されています。
今回は、入社以来36年間宴会業務一筋、ご披露宴をはじめ国内外の名だたる会議や国賓クラスの晩餐会など、幾多のイベントを成功に導いてきた森 孝彦に、宴会を裏で支える仕事の魅力やサービスのエキスパートとして大切にしてきたこと、次の世代へ繋いでいきたい想いを聞きました。

宴会は絶対無くならない。アフターコロナの
新たな宴会スタイルもポジティブに捉えて

― 今また動き出した人との集い。コロナ禍を経た宴会についての想いは…

コロナと時を同じくして宴会部の部長になり、こんなことが今起きるのだろうかと本当に大変でした。仮にコロナが終わってもきっとマスクは外せないだろう、ブッフェはもう無理だろう、ホテルの宴会は元のようには戻らないだろうと、当時は言われていました。でも、私は絶対に戻ると思っていました。というのは、日本の宴会は海外のパーティー文化とは異なり、人と人との繋がりがもっと密接で濃いのですね。そういう日本独自の宴会事情を考えると、きっと宴会は無くならないないし、コロナが収束すれば元に戻ると確信していました。ですので、この年末年始の賑わいは本当にうれしいです。

― そのなかで、オンラインなど新しいスタイルも登場してきました。

私はオンラインを宴会の新しいジャンルという捉え方をしています。そのことで日程が選びやすくなったり、国際会議や医学会などでの著名な先生の講演などもそこだけオンラインというオプションが考えられるので、選択肢や利便性が広がったとポジティブに受け止めています。

涙の花嫁先導、怒涛の国際会議…
熱きホテルマンの原点は9歳のときの鮮烈な感動

― ホテルマンを志望したのは9歳の頃とか…

そうですね、母の誕生日に家族4人で京王プラザホテルのフランス料理<アンブローシア>に来たのです。コース料理の最後にバースデーソングを歌ってケーキを持ってきてくれる。この世にこんな世界があるんだ!と感動して、将来こういうところで働いてみたいと思ったのです。
初めてのフランス料理にも、レストランの雰囲気にも、パリッとした制服に身を包んだスマートなウエイターにも、もうとにかくすべてに憧れました。その思いがずっとあり、大学卒業後はやはりホテルマンになりたいと。京王プラザホテルを選んだのは、憧れたホテルだから。実は<アンブローシア>のウエイターかバーテンダーになりたかったのです。両方ともなれませんでしたが(笑)

― 宴会の仕事との出会いは…?

入社が決まって本配属になる前に、当時はアルバイトをする期間があり、そこで宴会の担当になりました。バブルの頃でものすごく忙しく、1000名、2000名といった宴席の中、一日中駆け回る日々でしたが、そこで「こんなに面白い仕事はない」と思いました。例えば正餐の宴席が終わるとすぐ会議用に作り替えるとか、変化がものすごいのです。毎日、本当にクタクタになるくらい大変なのですが、終わった後にものすごく満足感が得られる。毎日こんなに満足感が得られる仕事って他にはないなと、仕事をしていてすごく面白かったです。その後、宴会部に本配属になり、そこから36年です(笑)。

― 長いキャリアのなかで忘れられないご宴席をあげるとしたら…

今でも思い出すと涙しそうになるのが、入社して4年目に担当した披露宴です。キャンドルサービスの際に新婦が予定のルートを外れて目の見えない叔母様の前に進み、「叔母ちゃん、お色直しは黄色いドレスよ!」と。叔母様はドレスを両手で触りながら「よく似合うよ、綺麗だね。ちゃんと見えるよ」と返されたのですが、そのやりとりがもう感動的で。人のこういう場面に仕事で携われるということがものすごく幸せなことだと思いました。キャプテンとして泣くのはプロフェッショナルじゃないと思っていたのですが、あの時はこらえきれず泣いてしまいました。後にも先にも泣きながら花嫁を先導したのはこの時だけです。
限界に挑戦したということでは、ホテル始まって以来の全館貸切り・5000人規模の国際会議の開催10日前に急遽担当になったことも忘れられません。日々の膨大な変更依頼をこなしながらすべてを終えるまで2週間以上も泊まり込み、今では考えられないくらいの怒涛の日々でした。おかげさまですべてを無事に終えた時は、満足感で全身に鳥肌が立ちました。その時に、仕事で人間やれないことはないんだなと思いました(笑)。これらのご宴席はやはり忘れることのできない一生の思い出です。

サービスはお客様の立場にどれだけ立てるか
自分がプロフェッショナルであるということを忘れない

人事部人材戦略 サービスクオリティマネジャー 森 孝彦

― キャリアのほとんどをサービス部門で築いてきた自身の考えるサービスとは…?

私はサービスとはお客様の立場にどれだけ立てるか、お客様の気持ちをどれだけ汲み取れるかだと思います。宴会の仕事は段取り八分なんです。実際に何が起こるかわからないので事前の下調べがものすごく重要です。よくスポーツ選手がイメージトレーニングをしますが、私も、今日の披露宴はどのように回ろうか、楽曲のここの歌詞に合わせてメインのキャンドルを点火するにはどのスピードで歩くのがいいかなど、シミュレーションを重ねたこともありました。

― 周到な事前準備やイメージトレーニングなど、それを続けていくモチベーションの源はどこに?

それは「自分はプロフェッショナルだ」という意識ですね。「お客様は私のことをプロフェッショナルだと思ってくださっている」ということです。だからこそ、お客様に対して自分はサービスのプロフェッショナルですと胸を張って言えるような仕事をしようと。これは入社後宴会部の先輩たちがお客様のリクエストに応えるテキパキとした指示に驚き、憧れ、まさにプロフェッショナルの集団だなと思い、自分もその仲間に入りたいと思った時からずっと意識してきたことです。その先輩たちに配属初日に必需品としてもらったオープナーは、もう古びてはいますが今でも宝物ですし、手にすると現場でやっていた当時の気持ちを思い出します。

― 現在はサービスクオリティマネジャーとして、後進の指導にもあたっています。

私たちは、若いスタッフが気が付かないことを一緒にやっていこうというスタンスでいます。先ほども言いましたが、自分がプロフェッショナルであり、お客様からそう見られているということは忘れないでいてもらいたいですね。そして自分は常に1人じゃないと思ってもらいたいです。今の若い人はみんな自分で抱えてしまいがちですが、とくに宴会はチームワーク・チームプレーですので、自分がすべてを抱えるのではなくみんなで一緒にやろうと。それで宴会がうまくいけばいいのです。宴会がうまくいく=お客様に満足していただくということなのです。

― 今振り返って、ずっと携わってきた宴会の仕事とは…?

「これ以上はない最高の仕事」、ですね。この仕事を選び、京王プラザホテルを選び、そこで定年を迎えましたけれど、本当によかったと思っています。
ホテルにも、ホテルに集うお客様にも感謝ですし、上司や同僚に助けられたことはたくさんあります。本当に仲間がいなかったらできなかったことばかりです。宴会は、大変なしんどい経験を喜びに変えてくれる仕事。お客様やそのご宴席が、そして仲間が、達成感や満足感に変えてくれる仕事だと思います。

― これから春に向けて華やかな集まりが多くなるシーズン。ご利用されるお客様にひとこと…

どうぞ、なんでもおっしゃってください、ということですね。ホテルにこんなことを言ってもいいのかな、お願いしてもいいのかなと躊躇されたり、遠慮される方もおられます。私たちはご出席の方をおもてなしし、喜んでもらいたいという幹事様と同じ思いでおります。ですからやりたいことはなんでもおっしゃっていただいて、どうぞ私たちをお使いくださいとお伝えしたいです。

人事部人材戦略 サービスクオリティマネジャー 森 孝彦 Takahiko Mori

人事部人材戦略 サービスクオリティマネジャー
森 孝彦 Takahiko Mori

1986年、入社。
宴会部ウエイターを経て、1990年宴会部宴会セールスへ異動。
1992年、宴会部宴会サービス キャプテンウエイターに復帰。
宴会予約支配人、ブライダル支配人を経て、2014年宴会部長に就任。
2019年、宴会料飲セールス部長を経て2021年再び宴会部長に就任後、2023年6月より現職。

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