人事部人材戦略 サービスクオリティマネジャー 森 孝彦

Plaza
Professionals

「出会いを大切に一つひとつの仕事に向き合えば、毎日が新しく、楽しみになる

宿泊部フロント 宿泊クラーク
 佐々木 克明 

3月に新たなくつろぎの空間SKY PLAZA IBASHOとして生まれ変わる本館47階。
ホテルの最上階に位置するこのフロアは、開業当初は日本一の高さを誇る展望室として大きな話題を呼び、地上170mからの眺望が大変な人気を博した歴史をもちます。
そこで今回は、1973年の入社以来半世紀にわたりホテルの変遷を見守り続けてきた佐々木克明に、当時の展望室の賑わいの思い出と、生まれ変わる新たなフロアへの思い、ホテルマンとして大切にしてきた接客流儀などを聞きました。

眺望を楽しめるなんて、
他にはなかった時代
高層階には憧れの場所がたくさんあった

― まず本館47階にあった展望室とは…?

展望室〈スカイプロムナード〉は1971年6月のホテル開業に先駆けてひと月前にオープン。大盛況で、連日入場待ちの列が新宿駅まで続いたと聞いています。私が入社した1973年頃は少し落ち着いていましたが、眺望を楽しむ場所は京王プラザホテルしかなかったですし、週末には全国の新婚カップルがここを目指してきたように、すごい人気でした。
当時ベルマンの仕事に就いていたので、何回かお客様を47階までご案内しましたが、360度すべて見渡せる感じですから、それは感激ですね。
この展望室以外にも44階、45階という高層フロアにはフランス料理〈アンブローシア〉やスカイラウンジ〈オーロララウンジ〉、スカイバー〈ポールスター〉など憧れの場所がたくさんあり、とても活気に満ちていた時代だったと思います。

― 今回、新たに生まれ変わる47階への思いは…

現在、南館34階のリュクスラウンジ(2/29をもって営業終了)でもお客様をお迎えしていますが、やはりリラックスしてお過ごしいただくということ。落ち着いてリラックスできるような場所は喜ばれます。お仕事をされたり、くつろがれたり、1日に何回もお見えになる方もいらっしゃいますし、今回の47階ではその規模がもっと大きく展開されることから、若い方も年配の方も、すべてのお客様に心地よく過ごしていただければと期待しています。かつての展望室をご存知の方も懐かしく思ってお越しいただけたらうれしいです。

楽しくて、楽しくて、
あっという間の50年
お客様への言葉ひとつにこそ、
気持ちを込める

― ホテル入社のきっかけは?

当時は新卒売り手市場で、どんな職種にも就職できた時代でした。私は出身地の長野からとにかく東京に出て仕事をしたいという思いもあって東京のホテルに応募し、いちばん最初に内定が出たのが京王プラザホテルでした。

― はじめて見た京王プラザホテルの印象は?

田舎から出てきたもので、もうびっくりもいいところでした。しかも、なんと入社試験にも遅れてしまって(笑)。当時、新宿で高層ビルといえば京王プラザホテルだけなのでどこからでも見えるのですが、いざ西口を出たら迷ってしまいました。何とか試験が受けられてよかったです。

― そこから宿泊担当一筋で50年以上ですね。

最初の配属はベルマンです。どんな仕事かと期待いっぱいで、当時はパンアメリカン航空の定宿になっていたのでクルーの荷物の上げ下げと団体の荷物の上げ下げ、さらに個人のお客様のチェックインと、忙しかったです。とにかくすごい活気でしたね。
当時から「なんでもやってみよう」という社風で、周りのスタッフも20代前半が大半で仲間意識というか団結力はすごかったです。もう毎日楽しくて、楽しくて、仕事という感覚より楽しさの方が優っていました。明日は何があるのかな…と日々わくわくながら、ベルマンとドアマンを5年ずつくらい担当し、あっという間に10年が過ぎました。
その後フロントのレセプションを経て会計に入ってからは30年ほどひたすらチェックアウトのお客様と接してきて、気がつくと50年も経っていたという感じです(笑)

― ベルマンからフロントまで、接客の最前線で大切にしてきたことは?

ずっと携わるなかで、お客様に対する姿勢として「気持ちを込める」「相手を思いやる」ということを、ベルマンの時代から大切にしてきました。たとえば「いらっしゃいませ」や「ありがとうございました、またどうぞお越しくださいませ」といった決まった言葉も、口先だけでなく気持ちを込める。とくにフロント会計は、ご宿泊のお客様にとっては最後に接するホテルスタッフですので、短い言葉ひとつとっても大切に意識していました。

人への思いは、人との出会いから
出会いが自分を高め、楽しみもくれる

― 50年にわたるホテルマン人生のなかで印象に残ることとは…?

やはりお客様との出会いです。そこで接客を通じて得たさまざまな経験や交流が何よりも印象に残っています。ホテルのサービス業というのは人として成長させてくれるものではないかと思います。人との出会いが自分を高めてくれるし、楽しみもくれる。ですから、いい人生でしたね。
リピーターになってくださったお客様のなかには、私が新人の19歳の頃から毎年来てくださった方もいらして、昨年100歳のお祝いにお越しいただいたのが最後になりましたけれど、ホテルを介して親しく楽しく交流させていただけた大切な思い出です。
ホテルも「プラザ」という名前の通り、どなたにも開かれた広場という親しみやすい雰囲気が本当に良かったと思っています。かしこまっているのではなくて、どんな方にも来ていただける。そしていつの時代も話題になるオリジナリティがありました。その思いはもちろん今も変わらず、今回のSKY PLAZA IBASHOにも通じます。ホテルの新しい魅力の一つになって、いろんな方に来ていただけるとうれしいです。

― では最後に、若い人たちにエールをひと言…

今はスマホでなんでも解決できてしまいますが、いちばん大事なのはコミュニケーションじゃないかと思います。1人でこもっているのではなくて、接する、話す、ということで開けていくことがある。それには経験値はもちろん、一人ひとりの個性を生かして、その中からサービスにつなげていってほしいと思っています。
私は同じ会社にいればみんな仲間だと思っていましたから、部署を越えてどこの誰とも普通に話すようにしていましたし、社員同士で交流がないとお客様にもできないと考えています。そのことはすごく大切に思います。
ホテルのお客様は一期一会で去ってしまいますが、人との出会いから人への思いは生まれると思うのです。出会いを大切に一つひとつの仕事に向き合えば毎日が新しいですし、繰り返しの作業という思いにはならない。変化を楽しむことで、明日が楽しみになりますね。

人事部人材戦略 サービスクオリティマネジャー 森 孝彦 Takahiko Mori

宿泊部フロント 宿泊クラーク
佐々木克明 Yoshiaki Sasaki

1973年、入社。
フロントサービス ベルマンを経て1982年、宿泊部フロントオフィスクラークへ。
2006年、宿泊部フロント副支配人に就任後、嘱託期間を経て2019年より現職。

◎本館47階〈SKY PLAZA IBASHO〉の詳しい情報はー
https://www.keioplaza.co.jp/stay/sky_plaza_ibasho.html

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