人事部人材戦略 サービスクオリティマネージャー 杉本 誠

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「まず自分から笑顔で挨拶。笑顔は世界共通のコミュニケーションツールです

人事部人材戦略 サービスクオリティマネージャー
 杉本 誠 

レジャー利用のお客様がひときわ多くなるゴールデンウィーク。
絶え間なくお客様が行き交うロビーで、ホテルの印象を左右するともいえる大切なポジションを担うのがロビーサービスの仕事です。
今回は入社以来45年間、ロビーサービスやゲストリレーションズなどおもてなしの最前線で、お客様に喜んでいただけるサービスをつねに考え先頭に立って取り組んできた杉本 誠に、その仕事の魅力やホテルマンとして大切にしてきたこと、この先もつないでいきたい想いなどを聞きました。

ベルマンとしてキャリアをスタート
ホテルの顔となる仕事に喜びと誇りがあった

― ホテル入社のきっかけは…?

地元の山梨から買い物や遊びでよく来ていた新宿が好きで、できるなら新宿で働きたいという単純な思いでした。そこへ、当時日本一高いビルということで話題になった京王プラザホテルからの新卒採用募集があり、うれしくて応募しました。

― ホテルマンとして最初に配属されたベルマンの仕事は…?

当時のベルマンは、金のモールがついた赤いモンキーコートで詰襟の服がユニフォームでした。何事も初めての経験でとまどいましたが、すべてが新鮮でつねにワクワクして働いていました。お客様に喜んでいただくための所作を自分なりに考え、かっこいいホテルマンとして立ち居振る舞うことを頭に置いていたように思います。

― 当時の思い出や心に残るエピソードがあれば…

日本一の超高層ホテルということでとても人気があり、とくに週末には日本全国から何十組というハネムーナーがご宿泊され、お部屋へのご案内が忙しかった思い出があります。
また5年ほど経験したドアマンの仕事では、正面玄関にホテルの顔として自分1人が立ち、VIPのお迎え等の大役を任されていることに大きな喜びと誇りを感じ、高揚感がありました。
ドアマンは来館されるVIPのお顔とお名前を覚えて、お名前を呼んでご挨拶するのがプロフェッショナルの対応なのですが、新人の頃に著名なお客様を存じ上げず非常に恥ずかしい思いをしたこともあります。ベルマン時代には大晦日のカウントダウンイベントでお祭り気分に浮かれ、ユニフォーム姿でお客様と一緒になってツイストを踊ってしまうなど、若気の至りの破天荒な思い出も含めて、本当にたくさんのことを経験し学ばせてもらいました。

大切にしてきたのは笑顔での声がけ、
距離が縮まり、コミュニケーションが生まれる

― 顧客サービスの取り組みで大切にしてきたこととは…?

入社以来の接客業務を通じて、笑顔で対話するとお客様の反応が良く喜んでくださるということを肌で感じてきました。笑顔は世界共通のコミュニケーションツールです。満面の笑顔で自分から挨拶をすることが、接客の第一歩。こちらから「おはようございます、○○さま」とお声がけすると距離が縮まり、コミュニケーションがとれるのです。
また決まった挨拶文だけでなく、お客様にきめ細かく寄り添う会話も心がけてきたことです。例えば今日から3日間の天気と気温の予報を読み込んで話のきっかけにしたり、「素敵なお召し物ですね」とその日のお客様の服装や着こなしを話題にするなど、喜んでいただけるようなお声がけを大切にしていましたね。

― 長い接客キャリアのなかで、これは忘れられないという出来事は?

2011年3月11日、東日本大震災の日ですね。ゲストリレーションズの支配人として当日のロビーの責任者だったのですが、館内のエレベーターがすべて停止するなど、非常事態のオペレーションでした。滞在中のお客様への対応、集まって来られる帰宅困難者への対応、また安否確認のため国内外からひっきりなしにかかってくる電話の対応など、スタッフ総出で深夜までずっと追われていました。なかには出先の箱根で地震にあって身動きがとれないという外国人のお客様からの救出依頼の電話など、ホテルなら何とかしてくれるだろうという切羽詰まったご要望もあり、対応に苦慮したことを記憶しています。
さらに翌日からは原発事故の風評被害で外国人宿泊客の来館がなくなり、宿泊稼働が激減。ロビーやフロント前にお客様が1人もいらっしゃらないという事態になりました。
ちょうどその頃、宇宙飛行士の古川聡さんが宇宙ステーションから被災された方に向けたメッセージの放映があり、「今日一日がんばって努力すれば明日は少し良くなる、それを信じましょう」という内容の言葉に非常に感じ入ったことを覚えています。「今はお客様がいらっしゃらないロビーであっても、いつか以前のように賑わうホテルに戻ることを信じて、今日一日を細やかな心くばりで接客していこう」と解釈しました。震災から半年後、少しずつお客様が来館してくださるようになり賑わい始めたロビーを見た時には、うれしくて胸が熱くなりました。お客様がいらしてくださってこそのホテルなのだと改めて感じ、感謝しかなかったですね。

「フレンドリーなおもてなしと心」をこれからも
さらに世界基準のサービスレベル向上を目指して

― これまでのホテルマン人生のなかで後進に伝えていきたいこととは…?

45年間過ごしてきたホテルマン人生は感謝の一言です。そのなかで、まずはスタッフ同士、気づいた方から挨拶をしましょうということを伝えていきたいと思います。挨拶をするということは、相手に心を開いているサイン。そこから言葉を交わし合うことでコミュニケーションがとれ、相手をリスペクトする心も生まれてくると思うのです。同様にお客様に対しても、寄り添い、満面の笑みで挨拶するという所作を京王プラザホテルの規範として根付かせてほしいと思っています。

― 現在、ホテルのさらなるサービスレベル向上に取り組んでいるとか…

今世界基準に照らした「清潔さと状態」、「優雅で心のこもった、お客様に寄り添うサービス」、「ラグジュアリー感」の醸成を意識し、さらなるサービスレベルの向上を目指していきたいと思っています。
その実現のためにも今回社内で5S(整理・整頓・清掃・清潔・習慣)への取り組みを発信したのですが、スタッフ一人ひとりが5Sの感性をもって行動できるようにしたいと考えています。人の本能として仕方がないかもしれませんが、汚れがあっても見慣れると素通りしてしまう。そうではなく、そこに気づいていくという感性が大事だと思うのです。

― では最後に、これからもつないでいきたい想いをひとこと…

お客様に寄り添う「フレンドリーなおもてなしと心」です。京王プラザホテルはその名前のごとく、明るく開かれた広場であることが魅力ですし、気さくで親しみやすい雰囲気は個性だと思います。
お客様の期待に応えられるようお客様の立場に立って仕事をするという、これまで培ってきたおもてなしの姿勢をこれからもつないでいきたいですね。 そして繰り返しになりますが、「笑顔は世界共通のコミュニケーションツール」。笑顔のキャッチボールができると、心が豊かになった気持ちになりますし、その日1日が幸せな気分になります。まず自らが、相手に喜んでいただけることを率先して行っていくことが大事です。

人事部人材戦略 クオリティサービスマネージャー 杉本 誠 Makoto Sugimoto

人事部人材戦略 クオリティサービスマネージャー
杉本 誠 Makoto Sugimoto

1979年、入社。
ベルマン、ベルキャプテンなどを経て2004年、ロビーサービスチームリーダー就任。2009年、ゲストリレーションズ支配人、2012年、宿泊部副部長を経て2023年より現職。

VOL.100 次の半世紀へ、新たな挑戦を続ける京王プラザホテル