とろけるようなゼラチン質の食感とプリっとした金糸の歯ごたえに、旨味の凝縮されたスープが絡み合う中国料理<南園>のふかひれの姿煮。その味の決め手は、開業以来変わらない作り方を守り続ける伝統のスープです。
材料は豚もも肉に丸鶏と金華ハム。鶏ガラや骨だけを使うところもありますが、肉から煮込み、よりしっかりと旨味を出すのが<南園>のこだわり。味わいに深みを出す豚もも肉とさっぱりとした鶏のバランスが大切と言います。沸騰すると余計な肉の味が付いてしまうので、火力に気を配りながら大鍋のそばに立つこと実に7時間余り。大鍋から湯気が立ち上り、旨味の詰まった美味しそうな香りが厨房に広がると、透き通った琥珀色の極上スープの出来上がりです。
「ふかひれ自体はもともと味が無くつるっとした食感のみの食材なので、味は煮込むスープで決まる。だからスープが重要なんです」と語るのは、開業時からこのスープ作りを体で覚えてきた李国超<南園>統括料理長。伝統の極上スープはふかひれや鮑を煮る時の専用として、また鶏ガラを足すとさらにあっさりとしたつゆそばのスープに、金華ハムを抜くとコース料理のスープ用にと多彩なメニューのベースにもなっています。
受け継がれてきた味にも、新風を吹き込んだ味にも、いつの時代も<南園>の味を支えてきた伝統のスープ。素材の味わいを引き立て食欲をかき立てる琥珀の滴に、ホテルの歴史が宿ります。